「平清盛」の頃より始まり、「いだてん」以降の大河ドラマは大なり小なり、近年の歴史研究の最前線を取り入れながら史実と物語を上手くクロスオーバーさせながら作っている製作者側の努力が感じられます。何となくですが、大成功を収めた「真田丸」に比べて「おんな城主直虎」の史実との乖離が起きてしまったという失敗が、NHKをより掘り下げた史実研究に向かわせたようにも思えます。女城主というテーマを謳っておきながら放映前に実は女性ではなかった、何なら親今川の急先鋒だったとあってはドラマも企画倒れですからね。
にもかかわらず、昨今、W氏を始めとした自称歴史好きを名乗る、一部の歴史界隈の層からは最近の大河ドラマを史実を無視した荒唐無稽なものと批判の対象にしています。大河ドラマである以上、現代社会に対する寓話的な意味ももたせ、オリジナルエピソードや脚色を加えることはもちろんあるのですが、彼らの至高とする春日局、黄金の日日、独眼竜政宗といった90年代前後の大河ドラマは現代のそれよりも創作エピソードが多く、それが史実としてつい最近まで通説としてできてしまうほどに功罪のあるものでした。
このような歴史認知の歪みが、名古屋城バリアフリー化に反対するヘイト名古屋市民なのでしょう。
名古屋城は老朽化の問題が明らかになってから木造化の見直しが始まったのが2012年、2022年に新天守完成を目途にプロジェクトが始動したのにも関わらず、未だ計画の着工にも至っていません。
2018年にも朝日新聞がとりあげられており、ここでもバリアフリー化に関する議論があったとしています。名古屋城は焼失前の実測調査や写真といった歴史資料が豊富にあることから、当時の天守を完全に再現できると河村市長は豪語します。しかし「忠実に忠実な復元」にこだわる余り、昭和に再建された建物にはあったエレベーターを導入せず、これが紛糾したのです。もちろん河村市長が障害者に対するヘイト感情を持っていたのではなく、歩行型のアシストロボットやVR技術による導入といった代替案を提案し、「誰でも史実の名古屋城を感じられるようにする」と説明しているのですが、当時はこれらの技術は現実的なものではなく意見がまとまらずに計画が頓挫していたのでした。
そこからコロナ禍で名古屋城再建どころの話じゃなくなって3年が過ぎ、ようやく再度市民討論会を開いて、おそらく史実にこだわる河村市長がエレベーター反対派がもっているであろう快刀乱麻な解決策を期待したのですが、待っていたのは昭和以前の差別的発言のオンパレード。
城とバリアフリーに関する議論で言えば、単純明快で目的によって入れる入れないが明らかです。
城にエレベーターやバリアフリーがなかったのか?と言えば普通にバリアフリー化しています。三代将軍・徳川家光は祖父の代より徳川家に仕える恩顧の重臣・藤堂高虎が高齢のため登城が厳しくなると、城内をバリアフリー化しました。
また織田信長は安土城の建築にあたり中央部に人力のエレベーターを導入しています。実用性はともかく技術的に可能なら戦国大名たちもエレベーターやスロープを導入したかったのではないかな?