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「稲荷の知音あるらむ。」


戦国大名・細川忠興が息子、忠利に送った伊達政宗に対する評価である。
政宗は何かと権力者にアピールしてご機嫌をとることが上手いのだが、諸大名に「狐でも憑いてるんじゃないのか」と言われるほど暴走してしまうこともある。

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江戸時代のお話。政宗は家臣を引き連れて喜多七太夫の勧進帳講演を観に行った。この七太夫のは七歳にして能の世界に飛び込んだ当時有名な能の第一人者である。演場にやってきた政宗だが、残念なことに舞台は終わっており、役者たちは帰ってしまっていたのだ。

これに対して政宗は激怒!儂がここまで足を運んできたのだから演目の一つぐらい見せろと座長を怒鳴り散らすのだが、役者が帰ってしまったのではどうにもならないと断られてしまう。

これにカチンときた政宗は手に持っていた刀を抜いて、家臣の制止を振り切り、舞台に飛び乗ってこのまま見せないというならこの政宗、家臣共を引き連れてお主の一座全員を斬ってしまうぞ!」暴れまわる。居合わせた家臣は
「またうちの殿が迷惑かけてすみません」とさぞ肩身の狭い思いをしたことだろう。

このままでは埒があかないので、座長は仕方なく役者たちを呼び戻し再公演の準備をし始める。


そのまま、行儀よく能を見て機嫌を直して帰っていく政宗・・・ではなかった。どうも観客自分一人では戻ってきてくれた役者たちに申し訳ないとでも思ったのだろうか、今度は近くにいた庶民を片っ端から連れてきて「今から七太夫の能が始まるぞ!」と無理やり観客にして持ってきた酒やお菓子を観客席に放り込み始める。

引き込まれた観客もたまったものではない、たまたま運悪く観客となっていた浪人の頭に饅頭が当たったようで「何するんじゃ!」と饅頭を観客席から投げ返し始めてくる。いよいよ能どころではなくなってきた。

騒然としてきた現場に、調子にのった政宗は今度は持っていた大量の銭を観客席にばらまき始めたのだ!
もはや能とか関係なく、我先に金を拾おうと暴徒と化した群衆と戻ってきたはいいが現場の混乱っぷりに怯えまくる役者たちを見て、政宗は機嫌を直し大笑いしていた。これが東北のパリピか・・・。


市井の騒動を諸大名が知らないはずもなく、政宗の暴挙を知った友人の忠興が「誰だって狐に憑かれてありえない事をしでかすかもしれないから・・・」と彼なりにフォローを入れた言葉だったのだろう。一人が暴走して一人が冷静にコメント。リアルカッスレみたいなことしてんな!