インターネットという第4のマスメディアが台頭して以降も、まだテレビのプロパガンダ力はある程度力を保っています。これは各種のyoutuberやインフルエンサーがテレビに出演すれば彼らがそれを誇らしげに語るように、未だテレビによる拡散力と情報伝達の正確さ(ここでいう情報の正確さとは発信者の意図通りに情報が相手に伝えられるということである)はラジオ・新聞・インターネットを遥かに凌駕しているといえます。

 

 

逆に言えば、ここに付け入る隙があります。情報発信者を・・・いや情報発信源をコントロールすれば己の主張を自由自在に怪電波に乗せて日本の津々浦々に届けることができるのです。もっとも通信会社も電波ジャックに対しての防衛策は進化し続けています。21世紀の今時、電波ジャックをしようものなら逆にそのテレビ塔が発信者の居場所を逆探知し、妨害電波を流すとともに犯人のいる方角ぐらいなら分かってしまいます。故に、あなたが怪情報や奇天烈な主張を披露したいなら300万円払って選挙に立候補するか、駅前でロビー活動するのがアナログだけど一番安全かつ手っ取り早い方法と言えますね。

 

 

 

が、ほんの30年前までは件の電波ジャックが意外にも有効だったようです。

 

 

 





 

1987年に放送された「独眼竜政宗」は大河ドラマ史上最高傑作との呼び声が高く、令和における伊達政宗像は史実よりも渡辺謙が演じた政宗の方が近いのではないかというぐらい成功作でありました。平均視聴率は驚異の39.7%。当時の日曜夜の娯楽がテレビしかなかったことを考慮しても、これと肩を並べる現代のドラマなんて半沢直樹ぐらいなものでしょう。

 

 


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NHK「独眼竜政宗」より



 

その超人気大河ドラマが何と電波ジャックに狙われたのです。

 

 

 

45日放送、第14話「勝ち名乗り」。この回は第2部の始まりに位置付けられ飛躍の回でした(マイナーな所では伊達家臣・鈴木重信が初登場)。

 

 

放送の途中に、突然電波が乱れ

 

 

 

「緊急放送を始めます」

 

世界緊急放送





 

 

と女の声が流れ

 

 

 

「中核派は人殺し」

「長谷川英憲は杉並区から追放しよう」

 

 

 

などとの声と共に、画面には炎上する自動車や選立候補者のポスターが430秒にわたって映し出されました。よりにもよって化け物視聴率の政宗への挑戦状であり、何十万人何百万人がこの映像を見た可能性がありますが、意外にもNHKへの苦情は100件程度にとどまり、事件の10日後に犯人のグループが逮捕されるなど、事件のインパクトの割には大きな騒動に発展していないように思えます。

 

 

 

 

この事件の黒幕は、杉並区を拠点とする革マル派のグループ。学生運動から始まった昭和の新左翼の潮流は革マル派と中核派に二分され、一度は連合赤軍のような統一勢力になるも、内ゲバや無関係な人間への無差別テロ、そして世界各地へのテロ支援(どうやらイスラム過激派の自爆テロは連合赤軍の生き残りがムスリムに教えたものらしい。大東亜共栄圏を打ち砕くため日本の左翼は世界を破壊することを決意したようだ)によって日本人からはそっぽを向かれあさま山荘事件をきっかけに完全に市民の支持を失いました。

 

 

ですが、そんな反社会勢力が日本社会においそれと戻ってこれるわけもなく、革マル派と中核派は水面下で内ゲバの闘争をそれ以降も続けてきたのであります。

 

 

 

 

前述した長谷川英憲氏(以下敬称略)は杉並区・東京都議会議員を務めた政治家で、関連人物と言えば美人な中核派議員(パワーワードがすぎる)で有名な洞口朋子女史あたりが後継者でしょうか?

 

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洞口って誰か調べてみたらちょっと前に出てきた反社の女性だった
abemaにも出演して千葉麗子と番組内で論争したり、昔に比べれば丸くなったと言えば丸くなったのか・・・


 

 

中核派と敵対する革マル派は長谷川への選挙妨害を進めていくのですが、中核派も各地で抗争を続けてきた武闘派、杉並区各所で乱闘騒ぎを起こしていたのです。そのまま武力に訴えても無意味だと気が付いたのはよかったですが、何を狂ったか革マル派今度は公共の電話にのせて中核派への攻撃を画策するようになりました。2010年代には唐澤弁護士への攻撃をするために各地の企業や役所を電波ジャックした恒心教なる集団が暗躍していましたが、まぁこれに近い感じでしょうか。

 

 

 

特に問題となったのが1985622日の杉並区防災無線スピーカー計104か所から女の声で突然

 

 

 

 

「都議選に立候補している長谷川英憲はひどい男です」

「こんなひどい男を都議にしてはならない」

「彼らは中核派で人殺しです」

「長谷川英憲は人殺しーっ」

 

 



 

 

と大音量の放送を25分間にわたって流し続け、杉並区は大混乱に陥りました。この時、警視庁も捜査を進めたものの、何分電波ジャックへの知識が弱く犯人を逮捕できず迷宮入りという苦い結果に。警察の面子も潰されてしまう形となってしまったのです。

 

 

 

 

おそらく前述した独眼竜政宗のハイジャック事件も、逮捕されずに革命を推し進める新しい武器を手に入れたとウキウキだったのでしょうが、天下のNHKに手を出したのがまずかった。革マル派も視聴率40%という魅力に取りつかれていたのですが、それ故に代償も大きかったようです。

 

 

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また、再発防止という点に関しては、日本は非常に優秀だと思います。セキュリティも強固になった結果、1989年杉並区の防災無線は再び革マル派の襲撃を受けるのですがわずか3分で役所の人間に停止させられてしまい、大した事件にもなりませんでした。ついでにこの年、長谷川も悲願の杉並区議員に当選したという。

 

 

 




 

 

 

ということで令和の世の中になっても政治界隈・ネット界隈・陰謀論者界隈様々な界隈で危険な集団が各地で暴れまわっている昨今の日本でありますが、70年代80年代の革マル派中核派の暴走に比べれば可愛いものでしょう。何せ国民の40%が好んでいる大人気コンテンツに喧嘩を売った実績があるのですから・・・。今、そんな悪い意味で一騎当千しそうなやつなんていないでしょ?山本太郎とツイフェミとへずまりゅうと撮り鉄と転売ヤーぐらいしかいないでしょう。

 

 

 

 


 

(管理人の感想)

電波ジャックと言えばマックスヘッドルーム事件あたりが有名で、日本が起こした電波ジャックって意外にも革マル派がしかけたもの意外だと、後は企業ホームページへのクラッキングしかなかったりする。