ちゃんと計画は練っていますか?
でも、時には何も考えず行き当たりばったりで殺しちゃってもかえってうまくいくこともあるかもしれませんよ?
今回は世界史の暗殺者から2人。
計画に計画を重ねて失敗した暗殺者と、何も計画せずにエイヤーと暗殺を成功させてしまったケースについて紹介しましょう。
「傍若無人」荊軻
中国戦国時代、秦王政が中国を統一する少し前のお話。秦の勢力拡大を恐れた燕王は、荊軻という男を用いて政の暗殺を試みます。
荊軻は衛出身の人間で、読書と剣術を好んで各地を放浪しながら修行していた遊説家でありました。中国特有の高飛車な性格で衛王と折り合いがつかなかった荊軻は祖国を飛び出し、燕に流れ着きます。大酒飲みの荊軻は度々市場に入り浸っては大量の酒を飲み、騒ぎ立てる様はすぐに風の噂となり、燕王の耳に届きます。高漸離という音楽好きの男と意気投合し、漸離の演奏で荊軻が大声で日中謡ってたのだから街の名物おじさん(お兄さん)となっていたのでしょう。
燕王丹は参謀の田光と相談し、刺客として荊軻を推挙します。刺客の依頼を受けた荊軻は秦から亡命してきた将軍・桓齮の首を手土産に秦に乗り込みます。政と敵対する人間を殺せば信用を得られると考えたのですね。友人・高漸離の演奏で見送られた荊軻はこの暗殺が成功しても自身の命は無いものと覚悟を決めており白の死装束で出立したと言われています。
秦舞陽という用心棒(ちな中学の時に人を殺したことがある)、伝説の刀鍛冶・徐夫人の匕首、そして桓齮の首を携え、さっそうと暗殺の旅へ出かけた彼でしたが、いざ政に対面してみると、用心棒はガクガクと全身が震えだして役に立たず、政宛の偽の手紙に暗殺用具の匕首を挟んだまま渡してしまい、あっという間に計画がバレてしまいます。
こうなっては仕方が無いと荊軻はすぐに玉座にとびかかり匕首を奪い取って政めがけて刺そうとするのですが、政の袖がちぎれて逃げられてしまいます。しかし、政もテンパっており急いで腰の長物を抜こうとしても上手くいきません。その間に体勢を立て直した荊軻は再び政を追い回し、建物の柱を2人がぐるぐるしているあまりにも中国皇帝とは思えないギャグ漫画みたいな構図になってしまいます。
家臣や衛兵は何をしていたのかというと、秦の法律で武器を持って殿上へ上ることが禁じられていたので助けたくても助けられなかったのです。
政を助けたのはかかりつけ医の夏無且と言う男でした。夏無且の投げた薬箱が荊軻にヒットし昏倒、その隙に政は自身の長剣を取り出すことに成功し形勢逆転します。最後は足を斬られて動けなくなった荊軻は「本気で殺す気はなかったから、秦から奪われた土地を取り返す脅しだから(震え声)」と啖呵を切りますが、問答無用で政に成敗されてしまいます。
ちなみに用心棒の秦舞陽は部屋の隅でずっとがたがたと震えていたとか。はーつっかえ。。。
このぐだぐだ暗殺劇が失敗に終わった結果、暗殺を計画した燕を政が許すはずもなく攻撃を開始。執拗なまでの大軍に燕は守り切れず、暗殺計画から5年で滅んでしまうのでした。なお荊軻の友人である漸離も後に政の暗殺を謀りますが、自身の楽器に鉛の塊を仕込み、政にぶつけて重量兵器で殺そうとしましたが、狙いが外れあっけなく処刑されてしまいました。
「暗殺の天使」シャルロット・コルデー
フランス革命の時代、ルイ16世を捕らえた革命政府は思想の違いから3つの勢力に分裂します。王様とはうまくやっていこうとするフイヤン派、王様は一フランス市民のルイさんとして暮らしてもらおうと考えるジロンド派と、暴力革命を是とし王様を処刑すべきと考えたジャコバン派です。
市民革命は過激化するのが常で、思想がエスカレートしていった革命政府はジャコバン派が当時主流だったジロンド派を粛清して議会の主導権を握ったのです。この時初期のジャコバン派の主導者はジャン=ポール・マラーという男でした。
世界史の経緯は知らずとも、芸術の世界では「バスタブで死んでるおっさん」と説明したほうが分かりやすいでしょうか。ジャコバン派を主流に押し上げたマラーでしたが持病が悪化し自宅で療養中に、面会にやってきたジロンド派の支持者に暗殺されてしまうのです。
暴力を是とする男が最後は暴力によって粛清されたという訳ですね。
で、このマラのおっさんを殺害したのがシャルロットコルデーという貧乏貴族の娘。暗殺の「あ」の字も知らないような25歳の生娘によって、あっという間に殺害が成功してしまうのですからあまりにも唐突過ぎます。
彼女曰くジャコバン派の暴走を止めるためリーダーを殺せば粛清劇は止まるのではないかと考えたのですね、しかし思惑とは裏腹にジャコバン派の後を継いだ童貞弁護士(35)ロベスピエールによって、マラーの死は神格化されてしまいます。実際の所、マラー本人は持病が悪化して政治の一線からは退いており、ジャコバン派の主流からはお払い箱だったようで、マラー暗殺によって体のいいおはらい箱に加えてジャコバン派の権力集中、「女の子一人で暗殺なんかできるはずないだろ!」と至極真っ当な考えの下、無実のジロンド派が冤罪で引っ立てられ彼女と共にギロチン送りとなってしまったのです。
無念にも彼女の思惑とは180°逆方向へと進んでしまうのは皮肉な結果といえるでしょうね。
ところで、若いねーちゃんが突然、政界の重要人物宅に押し入って相手をぶっ殺そうとするケース
最近どこかでみたような・・・
いかん、危ないアブナイアブナイ…
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